研究概要 |
一般にルイス酸は基質に配位することによりその求電子性を向上させ種々の極性反応の触媒として機能する。また、ルイス酸が配位できない基質においてもその一電子還元体には配位できる場合がある。その場合、ルイス酸は電子移動反応の触媒として有効に機能すると考えられる。本研究では種々の希土類錯体の電子移動触媒作用について系統的に検討を行い、以下のような希土類錯体の電子移動触媒作用機構を明らかにした。 リボフラビン-2′,3′,4′,5′-テトラアセテート(Fl)は種々の希土類金属イオンと強く錯形成することがわかった。Flは希土類金属イオンと錯体を形成すると、その一重項励起状態の電子受容能力が顕著に増大した。p-メトキシベンジルアルコールはFlにより光酸化されないが、このフラビン-希土類イオン錯体を光触媒として用いると、酸化反応が進行するようになることを見いだした。また、アントラセン類とキノン類とのDiels-Alder反応、ケテンシリルアセタールとα β-不飽和ケトンのMichael付加反応、NADH類縁体からキノン類へのヒドリド移動反応は、Sc^<3+>,L^<3+>,Yb^<3+>等の希土類イオンの添加により進行することを見い出した。いずれの希土類イオンを用いた場合においても、Mg^<2+>を添加した場合よりも著しい触媒作用が見られ、特にSc^<3+>イオンが極めて有効な触媒として働くことを明らかにした。 これらの反応における希土類イオンの触媒作用を電子移動反応における触媒作用と比較検討した結果、いずれの場合も希土類イオンが酸化還元反応の律速段階である電子移動過程を顕著に触媒するために起こることがわかった。
|