研究概要 |
1)Ln[Co(CN)6]・nH2O-錯体 La系に関しては、二つのタイプの試料(AとB)が得られた。LaCo-A錯体のXRDパターンは、計算で求めた六方晶構造とよく一致しており、他相の存在は認められない。一方、LaCo-B錯体のXRDパターンは、La[Fe(CN)6]・5H2Oと似ており、二種類の結晶(六方晶と斜方晶)の混合物から成っていると推定される。LaCo-B錯体のXRDスペクトルから六方晶成分を差し引いて解析を行った所、残りのピークは斜方晶と決定できた。 2)Ln'xLn1-x"[Co(CN)6]・nH2O-錯体 斜方晶構造を持つLn[Co(CN)6]・nH2O(Ln:La〜Yb)錯体の格子定数は、Lnイオンの半径が増加するにつれて直線的に増加した。SmxEr1-xCo錯体とSmxYb1-xCo錯体は斜方晶として結晶化する。また、LaxSm1-xCo錯体はx=0〜0.6の範囲で、LaxHo1-xCo錯体はx=0〜0.5の範囲で結晶化する。La0.8Sm0.2Co-とLaxHo1-xCo錯体(x=0.6〜0.8)では、六方晶と斜方晶の混合物が得られる。錯体に含まれる2種類の希土類イオンに関する有効半径を導入する。ここで有効半径は、reff=xrLn'+(1-x)rLn"で定義される。有効半径の関数として斜方構造錯体の格子定数をプロットすると、LnCo錯体に関して観察された場合と同様の直線性が現れる。このことは、錯体の結晶構造がLnイオンの有効半径によって主に制御されることを示している。 3)熱分解Ln'xLn"1-x[Co(CN)6]・nH2O-錯体 ペロブスカイト型酸化物であるLaxLn"1-xCoO3は、異核錯体:LaxLn"1-x[Co(CN)6]・nH2Oの熱分解によって生成する。LaCoO3(六方晶)を除外すると、LaxSm1-xCoO3について観察される構造は斜方晶である。一方、HoCoO3は対応するヘキサシアノ錯体を1000℃で熱分解してもペロブスカイト型構造は形成されないが、HoをLaで部分的に置換していくと、斜方晶型のペロブスカイトが800℃においてでさえ生成する。斜方晶ペロブスカイト型酸化物の格子定数b,cとLnイオンの有効半径との間には、単調な相関関係(擬線形性)が見出される。このことは、LnxLn"-xCoO3の結晶構造がLnイオンのイオン半径によって主に支配されていることを示している。
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