不飽和ヘテロポリ酸陰イオンとの錯形成を利用した希土類元素の4価の酸化状態の安定化に関する研究を引き続き行っている。本年度の試みの1つは、Ce(IV/III)と同様にPr(IV/III)あるいはTb(IV/III)のレドックスポテンシャルが低下し、通常のボルタンメトリーの電位範囲でCV測定をできるか否か確かめることである。そのためCe(III)あるいはPr(III)とPW_<11>O_<39>^<7->との錯体の有機溶媒への可溶化を検討する。何故なら、有機溶媒中では水溶液中におけるよりより高電位までの測定が可能であるからである。第2の目的は装置をupgradeすることにより、水溶液中のセリウム錯体のレドックス挙動に関してCVシミュレーションを試み、加えて、新しい電気化学テクニックとして、Osteryoung矩形波ボルタンメントリ-(OSWV)と第2高調波交流ボルタンメトリー(SHACV)の適用性を検討することである。 |Pr(PW_<11>O_<39>)_2|^<11>の対イオンとして存在しているK^+イオンの18-crown-6への溶解度の検討の結果、Pr(III)錯体のK塩は18-crown-6の存在下では水、アセトニリル、メチルアルコールおよびクロロホルムに可溶であることを紫外可視吸収スペクトルから確認した。今後、支持電解質を検討して、レッドクスポテンシャルの測定を行う計画である。 DigiSim2.0を用いたCVシミュレーションは、Spitsynによって求められた安定度定数の値を使うと観測したCVとよく一致しているように思われ、種々のパラメーターの設定を慎重に行えば、大変有用な手法となりそうである。OSWVもまた本研究に有用であることがわかった。しかしながら、SHACVでは電極表面への吸着等のためまだ有用なデータを得るに至っていない。
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