研究概要 |
酸化物高温超伝導体のPrイオンの超伝導破壊効果に関連して以下の2点について研究を行った。 1.ペロブスカイト型酸化物中のPrイオンの価数と磁性 酸化物高温超伝導体中のPrイオンの超伝導破壊効果の機構としてPr^<4+>の形成による価電子帯のホール充填が磁化の温度変化を根拠として唱えられている。そこで結晶構造の単純なペロブスカイト中のA・B両サイトに価数の異なるPrの状態をつくり出しその磁性の研究を行った。 BaPrO_3およびPrScO_3を出発物質として元素置換を行いPr_<1-x>Ba_xScO_3,Pr_<1-x>Sr_xScO_3,PrSc_<1-x>Mg_xO_3,Ba_<1-x>La_xPrO_3,BaPr_<1-x>Bi_xO_3,およびPr_<1-x>Sr_xO_3の6系列について試料作製しX線回折で試料の評価を行った。中間組成の化合物が得られたのはPr_<1-x>Sr_xScO_3(x<0.2)とBaPr_<1-x>Bi_xO_3(x=0.5)のみであった。前者においてはxとともに酸素も欠損していきPrの価数は3価のままであった。後者の系ではBサイトのPr^<3+>はBi^<5+>と対になり秩序配列したときのみ存在可能であることが見出された。 PrScO_3の磁化測定により得られたAサイトのPr^<3+>の帯磁率の温度変化は3価の自由イオンの曲線に近いが磁化はやや小さい。これは結晶場の効果であると考えられる。BaPr_<0.5>Bi_<0.5>O_3はBサイトのPr^<3+>イオンによる小さな帯磁率を示す。 PrScO_3O_yの帯磁率の温度変化はPrScO_3のそれに近く磁化の値はやや小さい。このことはPrBa_2Cu_3O_y中のPrイオン3価に近い価数をもち結晶場とCuO_2面の酸素の2P軌道との混成の成果で磁化はやや小さくなっていることを示している。 2.Y_<1-x>Pr_xBa_2Cu_3O_yの配向試料における磁化緩和 磁化緩和の磁場依存性と温度依存性を詳細に測定し臨界電流密度の磁場依存性をJc^*(Hc_1/h)^nと仮定して解析した。nおよび臨界電流密度はx=0.02に極大を持つことが確認された。これはPrイオン間の平均距離がコヒーレンス長ξと同程度になるxの値であると考え解析を進めている。
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