研究概要 |
本年度は主にアルコキシドのランタニド二価錯体の合成、ならびにケトン類との反応を検討した。二価のヨウ化サマリウムあるいはイッテリビウムとリチウムアミドの反応により二価ランタニドのアミド錯体を得、これにフェノール誘導体を加えることにより(ArO)_2Ln(THF)_2錯体合成に成功しHMPA配位体についてX-線解析により構造を明らかにした。これら錯体の溶液にベンゾフェノンを加えるとまず暗紫色を呈するが、ゆっくりと無色の結晶が析出する。Ybの場合につきこの錯体の結晶構造を明らかにした。最初観測された色をもつケチル中間体が溶媒から水素を引き抜いた後不均化したと思われる(Pn_2CHO)_2(ArO)Yb(HMPA)_2錯体であることが解った。ベンゾフェノンの代りにフルオレノンを用いると、共鳴効果によるラジカルの反応性低下のため水素引き抜きは起こらず、対応するケチルラジカル錯体(ArO)_2(kety1)Ln(THF)_3(Ln=Sm,Yb)を高収率で得ることができ、X線による単結晶構造解析を行うことができた。ケチルラジカルはケトンを用いる有機合成における重要な中間体として古くから存在が推定されていたが、結晶として構造が確認できた初めての例である。このケチル錯体に配位したTHF溶媒は配位力が弱く、結晶をヘキサン/エーテル中に溶かすとエーテル一分子の配位に変わる。同時にケチルラジカルの分子間カップリングが起こり、結果的にサマリウムのピナコラート錯体が得られ、単結晶構造解析で確認できた。このピナコラート錯体をTEFに溶かすと炭素一炭素結合の切断が起こりケチル錯体が定量的に再生することも確認した。
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