研究概要 |
光励起子のX線構造解析に関して、可能性の高いハロゲン架橋一次元金属錯体について、以下のような興味深い結果を得ることに成功している。 (1)ハロゲン架橋一次元ニッケル錯体の電解合成と構造一物性相関。 電解酸化法を用いてハロゲン架橋一次元Ni^<III>-Br-Ni^<III>錯体、{[Ni(en)_2Br](C1O_4)_2}_∞、の2つの多形(α体とβ体)の結晶作成に成功した。α体の結晶構造解析から、架橋臭素原子は2つのニッケル原子の中央に位置し,Ni-Br距離は2.640(1)Åと長くなっていることが明らかになった。また、β体については一次元鎖方向の格子定数から2.693(2)Åと見積られた。このNi-Br距離の伸びは嵩高いC1O_4^-を外圏イオンに導入できたことによるものと思われる。また、磁化率の温度依存性の測定からNi^<III>上のスピン間に働く反強磁性相互作用の大きさをJ=-1700Kと見積もることができた。 (2)ハロゲン架橋一次元複核白金錯体、Pt_2(dta)_4I、の構造相転移。 Pt_2(dta)_4Iの格子定数の温度依存性を-160〜190℃の範囲で単結晶X線回折法を使って測定したところ、電気伝導度において観測された半導体→金属→半導体転移に対応して、-20〜100℃の温度範囲で単位格子の体積に関して負のヒステリシスを伴う異常な挙動が観測された。格子定数の温度依存性から90℃から100℃の間に一次相転移があり、また-20℃以下では低温相で100℃以上では高温相であることが明らかになった。-89℃および130℃における単結晶構造解析より、低温相では空間群はC2/cで結晶構造に乱れは見られないが、高温相ではA2/mでdta配位子のコンホメーションに乱れがあることが明らかになった。低温相と高温相の結晶構造の比較から、格子定数の温度変化の異常な挙動は、dta配位子のコンホメーションのorder/disorderに関係しているものと思われる。
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