本研究は、近藤格子系CeNiSnの大型純良単結晶の作成と、中性子非弾性散乱実験によるそのギャップ形成の起源を明らかにすることを主目的とした。中性子の実験は東大物性研の門脇、佐藤グループによりなされ、非弾性散乱によるCeNiSnの2meVと4meVのピークの反強磁性相関の詳細が明らかにされた。Niの代わりにCoを一部置換した系の非弾性散乱の実験も佐藤らによりなされ、2meVのピークは消失、4meVのピークは強度を減少させてはいるがb軸方向の一次元性を残していることを見い出し、反強磁性相関の詳細を明らかに出来た。CeNiSnについては、大浜等によりNMRの実験が行われ磁気励起の詳細が明らかになり、更に、ホルツマイヤー等により極低温領域までの各軸方向の磁気体積効果の実験成果が得られた。その他に、大型純良単結晶引き上げ炉の改良により、磁気的な近藤格子系であるCeNi2Al5とCePbAlの単結晶が作成された。石川等によりCeNi2Al5の熱伝導と熱電能、電気伝導の結晶異方性のある輸送現象の相関が調べられ、ブッシェ-ル等によりCeNi2Al5が二重kの磁気構造をもつことが明らかにされた。CePbAlは世界で始めて単結晶化に成功し、石川等によってその結晶磁気異方性の詳細が明らかにされた。本研究の目的の一つとして、ギャップを直接観測する目的で遠赤外領域の光の反射吸収の実験を計画したが、難波等によりデータが得られているが成果発表まで至っていない。遠赤外の実験、および、中性子非弾性散乱の高圧下、高磁場下、極低温の実験が今後も引き続いて行われる。
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