研究概要 |
本研究では小さな結晶場を持つと期待されたCaBe_2Ge_2型のCe化合物CePt_2Sn_2とCeRh_2Sb_2について、低温物性と結晶歪みとの関係を研究した。Yb化合物についても物質探索を行ったが、CaBe_3Ge_2型の単相試料はまだ得られていない。 (1)単結晶CePt_2Sn_2のスピングラス転移 我々の育成した単結晶は低温まで正方晶のままで、T_G=0.38Kでスピングラス転移を起こした。この結果は東大物性研 武田,石川との共同研究で行った交流帯磁率と比熱の測定によって得られた。一方、多結晶試料は室温付近で正方晶から単斜晶に歪み、T_N=0.8Kで反強磁性転移を起こす事が知られている。この比較から、低温での巨大な比熱係数には、重い電子状態の形成よりも、Ceの局在スピン間の短距離磁気秩序の寄与が大きいと判断された。 (2)ミュウオンスピン緩和で視た単結晶CePt_2Sn_2のスピン揺らぎ G. M. Luke,植村(コロンビア大)らと行ったミュウオンスピン緩和の実験によって、1K以下ではCeのスピン揺らぎが急に緩やかになるものの、20mKでも動的に揺らいでいることが判った。これは上記のスピングラス的振る舞いと一致する。 (3)新化合物CeRh_2Sb_2の低励起結晶場準位と近藤効果 この化合物は、約250Kで正方晶から三斜晶に歪み、さらに1.1Kで反強磁性転移を起こす事を見いだした。磁気的エントロピーの見積もりから、T_K=2Kの近藤温度と30Kの結晶場分裂幅とが求められた。従って、この系ではT_K=2Kの近藤効果とT_N=1.1Kを導くRKKY相互作用が競合している事が判った。
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