研究概要 |
本研究は非フェルミ液体(Non-Fermi Liquid,NFLと略記)状態の高圧下における安定性に関する知見を得るため、試料としてY1-xUxPd3を取り上げた。この物質はx=0.2付近でNFL特有の絶対温度Tに比例する電気抵抗を示すことで知られている。本研究においてはこの事を考え、この項の圧力変化を調べることにより、NFLの安定性を調べた。 電気抵抗は直流四端子法を用い、高圧装置としては2GPaまでをピストン・シリンダーを、又それ以上を東大物性研のキュービック・アンビルを用いて測定した。常圧では電気抵抗は文献と同じく約50K以下でT-linmear termを示したが、2GPaの圧力をかけると約10K以下でこの温度依存からのずれが見られた。更に圧力を6GPaまで上げるとTに比例する振る舞いは消え、電気抵抗はフェルミ液体特有のT^2に比例する温度依存を示す。即ちY0.8U0.2Pd3のNFL状態は厚く下において不安定となり通常の金属に見られるようなフェルミ液体状態に移行していくことになる。この結果は1気圧における近藤温度TKの体積に対する振る舞い、即ち体積の減少(圧力の増加)に伴うTKの増大の実験結果とも定性的に一致している。NFLが高圧下において、不安定になることは本研究によりはじめて明らかにされたものである。
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