前年度に開発した格子定数1.17、1.02μmに加えて、さらに短い0.88μmの2次元エアロッド格子を作成し、引き続きそのフォトンモード特性の解明を進めた。すなわち、前年度に見い出したブラッグ反射強度の異常の解明、並びにフォトニック結晶の輻射場と原子・分子との相互作用に関する初めての実験研究を行った。前者については、0次、1次、2次のブラッグ強度が入射光の波長に依存して逆転する事実を実験的に詳しく調べ、同時に理論的に解明できることを示した。この事実は、フォトニック結晶のフォトンモードが有する新しい側面、特性であり、従来、知られていなかった事実である。後者に関しては、エアロッド格子中に微量の色素分子を導入し、アルゴンレーザーで励起した際の発光特性を詳しく調べた。その結果、発光の波長強度、方向、偏光依存性は理論計算で求めたフォトニックバンド構造を良く反映していることがわかった。フォトニック結晶の輻射場と原子・分子に関する世界で初めての実験結果である。さらに、フォトニックバンドギャップ端で群速度が著しく遅くなると予想される現象の観測のため測定系の整備と予備実験を進め、十分な見直しを得た。 次に、3次元フォトニック結晶の開発に着手した。最終目標は、世界で未だ誰も成功していない、光の波長領域にフォトニックバンドギャップを持つ格子の開発である。最新のミクロな半導体作成技術を駆使して作成できる唯一のものは、単純立方格子であると考えて、その設計のための実験的シュミレーションが必要なために、ミリメートル、サブミリメートルのフォトニック結晶を作成した。すなわち、超音波加工技術を駆使して、ゲルマニウム、シリコンを材料にして、それぞれ1.3mm、0.5mmの単純立方格子を作成することに成功し、現在、遠赤外域で透過率の予備測定を実施中である。
|