本研究はUT-3サイクルにおける高温のH2-H2O-HBr三成分系から水素を連続的に分離するゼオライト膜の開発を試みたものである。結晶構造に数Åの細孔を有するゼオライトを基盤とする膜の問題点は、多結晶体として成膜されるゼオライト結晶間に間隙が出来やすくこの間隙からの漏れによって、本来ゼオライトの持つ数Åの細孔による選択的な分離が十分生かされないことが挙げられる。ここでは、テトラエトキシシラン(TEOS)の気相析出反応(CVD)法によって間隙を塞ぎ、ゼオライトの持つ数Åの細孔による選択的な分離が発揮されるゼオライト膜の開発を行った。水熱合成した膜質はゼオライトにアルミナ成分を全く含まないZSM-5型の疎水性を示すシリカライトである。シリカライト膜にTEOSの強制吸引式CVD処理を施し、ガス透過分離実験を行ったところ、CVD処理を行うことでゼオライト結晶間の間隙閉塞の制御ができることが分かった。H2-N2二成分系において、圧力差が10kPaで分離温度400℃以上において、H2の分離係数がKnudsen拡散の理論限界値3.74を十分越える分離性能が得られた。さらに、本来の目的であるH2-H2O-HBr三成分系においては、H2OとHBrに比べH2の透過・分離性の向上を図ることが出来た。これは成膜したシリカライト界面の疎水性効果が発現されたものと考えられる。
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