1.高分解能角度分解光電子分光法を用いてBi_2Sr_2CaCu_2O_8超伝導体の超伝導ギャップとその異方性の直接観測を行った。超伝導ギャップは、結晶中のCu-Oの結合方向で最大値約50meVを示し、それと45°傾いた方向ではぼゼロであった。この超伝導ギャップの異方性は、スピンが関与するdx^2-y^2対称性で良く説明される。また、放射光を用いた測定で観測されていたセロギャップ付近の異常は、放射性の強い偏光性とBi_2Sr_2CaCu_2O_8結晶中に存在する超周期構造の競合現象により現れた外的なものであり、超伝導ギャップの異方性はdx^2-y^2が本質的であることを確認した。 2.第1世代の高温超伝導体La_2CuO_4と同じ結晶構造を持ちLaがSrにCuがRuに置き換わった非銅系の超伝導体Sr_2RuO_4の電子構造を高分解能角度分解光電子分光法で研究した。その結果、銅系の酸化物高温超伝導体で見出されているのと同様な「拡張されたvan-Hove特異点」がフェルミ準位近傍に存在することを見出した。このことは、これまで提案されてきた「拡張されたvan-Hove特異点」が必ずしも高温超伝導発現の十分条件では無く、超伝導転移点を押し上げている他の要因があることを示している。また、銅系、非銅系に関わらず存在する「拡張されたvan-Hove特異点」は、2次元強相関d電子系に共通の特徴的な電子構造であると考えられる。
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