研究概要 |
金属-絶縁体転移を示す典型的物質系である(V_<1-X>Ti_X)_2O_3の金属相の電子状態を磁気的性質の面から磁化率、核磁気共鳴(NMR)、中性子散乱によって調べ次のような結果を得た。 1.弱磁場磁化率測定により、x=0.055,x=0.08の組成を持つ試料では従来報告されていた反強磁性転移の他、更に低温側に別の磁気転移を示唆する異常が観測された。 2.NMR測定によりスピン帯磁率はネ-ル温度以上の領域で温度低下に伴い減少することが明らかになった。これはスピンギャップの存在を示唆する。 3.常磁性相におけるNMRスピン格子緩和時間を測定した。緩和率は弱い遍歴電子反強磁性体においてスピンの揺らぎ理論から計算される温度依存性と一致することがわかった。 4.x=0.05の組成を持つ単結晶試料を用いた中性子散乱実験を行ない、反強磁性相での磁気ブラッグ散乱を観測した。磁気構造はインコメンシュレート反強磁性であり、磁気構造を特徴づけるベクトルは酸素過剰系試料において報告されている値に近いことがわかった。 今後は反強磁性相におけるNMR信号の観測によりバナジウムサイトの均一性の確認、低温側の磁化率異常に対する微視的情報の収集などを行なう。また、更に大きい単結晶試料を作成し、中性子非弾性散乱実験を行ない、磁気励起スペクトルを測定する予定である。
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