研究概要 |
地球は,地球内部の各層と海洋,陸面,大気圏などが互いに相互作用するシステムである.この相互作用を,内部からと外部からのフォーシングに応答する系としてとらえようというのが基本的考えである.大陸の成長,海水準の永年変化,大陸配置の変化,スラブが660km不連続面にたまっては落ちるflushing event,それに引き続くプルームの上昇,ウイルソンサイクル,などが数十億年から数億年のタイムスケールで起き,表層圏とマントルとの間の元素の運動・循環・分配の変化,ひいては気候変動をもたらす.一方そのような外的環境が変わった場合,たとえば大陸配置や海水準などが変わった場合,気候がどのように変化するかを外部フォーシングに対する応答としてとらえようとする. 40億年前の太古代のはじめからマントル対流がどのような形態をとって来たのかを明らかにした.40億年前から20億年前ころまでは,マントル内で部分溶融が盛んに起こり,化学的に成層した溶け残りマントルがマントル上部を覆い,それがときおりなだれのように崩れるというマントル対流であり,20億年以降は現在に見られるような薄い境界層の発達するマントル対流となる.したがって,A/P境界事変のうち20億年前の事変は,現在に見られるようなマントル対流,すなわちプレートテクトニクスへの移行を意味しているらしい. マントル対流の形態の変化が起きたとき,海水準がどう変化するかを,パラメーター化対流の手法を用いて計算した.それによると次第に海水準は低下するが,20億年前に突然800mくらい上昇する.13億年前にピークに達した後は次第に低下し,現在に至る.この海水準変化から大陸の露出面積を計算すると,28-19億年前,10-0億年前の二つの期間に現在の地表面積の40%以上露出していたことになる.このような1次的海水準変化にもとづいて,さらに短いタイムスケールの海水準変化を,19億年前はじめて超大陸が形成されてからのウイルソンサイクルを復元することによって計算した.またこれからGEOCARBモデルによってCO_2濃度,地表面温度を計算した.これを気候モデルや海洋物質循環モデルと結びつけるために,いくつかの過去にあったかもしれない大陸配置,海洋分布を仮定して,気候変動と植生分布,海洋循環とそれに伴う堆積物,溶存酸素などの分布などを計算した. 以上とは独立に,非線形複雑系の挙動と進化の研究をすすめた.地球のような複雑系は臨界状態に自己組織化する.複雑系がそうなる仕組みは,系の要素が他者を通じて自己を観察してその振る舞いを決めるからである.
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