本研究の目的は、太陽の磁場と全輻射総量の長期変動の素過程を太陽対流層内部の微分回転とグローバル対流のダイナモ作用によって明らかにし、太陽の磁場と全輻射総量の振動と変動を、40億年の地球史を探る時の時計として扱うことが出来るかどうか評価し、出来る時は、どのような時、どのように出来るかを明らかにすることである。本年度の成果は、磁場の11年周期的変動と全輻射量総量の変化に10年の位相のずれがあるという、これまでの発見の成果をさらに推し進め、具体的な磁束菅の熱の流れを担う対流運動を追跡する方法を定式化したことである。更に、地球との関連において、地球の気候変動を追跡する単純化したモデルとして、二つの温度差のある円筒内の流れを、長期間数値積分するスキームを大学院生の黄 文宏と協力して作り、この円筒内の流れが、容易に、地球の気候を左右するロスビー波となることを確認し、このロスビー波の流れの性質が二つの円筒の温度差に敏感に反応するときがあることを発見したことである。即ち、ある温度差の領域では、流れの性質はあまり変わらなくても、そこからわずかに異なった別の領域では流れの性質が大きく変わるのである。これは流れの非線形性の現象で、太陽から来る輻射の量がわずかに変化して、地球の極と赤道の温度さがわずかに変化しても、地球大気の流れの様子は大きく変わることが有り得ることを示している。この流れのスキームは、回転流体の一般の流れを追跡するのにも使え、太陽のように球形の対流層内の流れと磁場の非線形相互作用を追跡する方法の定式化はこのことに基づいている。
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