本研究は液体シンチレータを用いて炭素14を計測することが目的であった。本年度に行なわれた作業は二つに分けられる。 一つは、真空ライン系を完成させ、年輪からベンゼンを作るまでの化学処理過程を確立させることであった。そのため、本科研費で真空ラインを完成させるための部品等を購入した。年輪を得るための木材としては松や桧を用いた。木材を年輪によって細かく粉砕し、前処理を行なった後燃焼により炭酸ガスを発生させ、アセチレン生成を通してベンゼンにもっていくまで試行錯誤を繰り返し、その過程を確立することになった。 もう一つはできたベンゼンにシンチレータを加え、液体シンチレータの試料とし、炭素14を測定することであった。このシステムは自作であり、炭素14を2個の光電子増倍管の同期信号で調べるものであるが、環境放射能や宇宙線による雑音を除去するために全体を無酸素銅と鉛でおおい、さらにプラスティックシンチレータをアンチカウンターとして用いたシステムである。このシステムは太陽地球環境研究所所有のものと本科研費によって購入した消耗品で作り、年輪から作ったベンゼンからの炭素14の測定に成功した。 年輪から炭素14を測定するまでの過程を確立したので、いよいよ屋久杉を用いたシュペーラー極小期の太陽活動の測定に移ることができる。測定はこれからであり本科研費の年度内に結論まで達することはできなかったが、これから得られる結果は太陽活動が地球に及ぼす影響を知る上で計り知れない学術的意義をもたらすと期待される。
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