研究概要 |
我々は,化石燃料に替わるクリーンなエネルギー資源として水素を考え,効率良く水素を生成するシステムに必要な高導電性電子-イオン混合導電体の開発を目的としている.本研究では水素を生成する方法として電子-イオン混合導電体を酸素分離材として用いた高温における水蒸気の直接分解を考えている.本年度は高温耐熱性を有する安定化ジルコニアをベースにした混合導電体について導電特性の評価を行い,更に,酸素透過率測定の結果をあわせて酸素分離材への適用の可能性について検討した. 本研究で用いた電子-イオン混合導電体はYb_2O_3安定化ZrO_2にTiO_2を固溶させた系(Ti-YbSZ)である.この系はYb_2O_3を10mol%固溶したものに対して,TiO_2の固溶範囲が20mol%であり,TiO_2をY_2O_3安定化ZrO_2にドープした系(Ti-YSZ)よりも広がることがわかった.電気伝導度の温度依存性はTiO_2の添加量が多いほど電気伝導度が減少するが,高温では低温に比べ伝導度の減少の割合が小さくなることがわかった.酸素分離材として利用する際の動作温度は2000K程度であり,測定した結果を外挿することその温度での伝導度の低下は30〜40%程度であると考えられる.電気伝導度の酸素分圧依存性から低酸素分圧雰囲気において電子導電性が現れ,TiO_2の固溶量が大きいほど電子導電性が高く,また高酸素分圧に電子導電性が現れることがわかった. 酸素透過率測定を行った結果,TiO_2の固溶量が15mol%と20mol%の試料については電子導電率が高いので,全電気伝導度が小さいが高い酸素透過率が得られ,Ti-YSZに比べ約5倍高い値が得られた. この系を高温水蒸気直接分解用酸素分離材として適用することは可能であると考えられるので,今後この系を用いて高温水蒸気直接分解による水素生成試験を行い,またエネルギー変換効率やシステムを構築した時のエネルギー収支について検討を行う予定である.
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