本研究では、従来研究対象となっていたポリエチレンオキシドと比較して高いTgを持ち、かつ効率良く塩を溶解させることの可能な極性基・配位基の導入された各種高分子をマトリクスとする高分子固体電解質の作製、そして、得られた高分子固体電解質中のイオン輸送現象を明らかにすることを目的とした。ポリビニルアルコールPVA(Tg=85℃)およびポリパラバン酸PPA(Tg=350℃程度)の高分子固体電解質用マトリクスは、ジメチルスルホキシドあるいはジメチルホルムアミド中でLi[CF_3SO_3]、LiBF_4等のアルカリ金属塩をポリマー1gあたり1.5gと高濃度まで溶解させることが可能であった。20℃におけるリチウム-高分子固体電解質の電気伝導度は、10^<-3.5>Scm^<-1>10^<-5.5>Scm^<-1>であった。また、リチウム-PPA高分子固体電解質は、180℃で10^<-2>Scm^<-1>という電気伝導度を示し、高い熱安定性を有する高分子固体電解質であることがわかった。さらに、電極材料として炭素-粘土複合焼結体、電階質としてPVA-リチウム塩系高分子固体電解質を用い、充放電電流効率が90%以上、充放電が50サイクル以上可逆的に可能な全固体型電気二重層コンデンサーを作製した。このコンデンサーの電気二重層容量は約2.7F/(cm^<-3> of the cell)であり、本研究で得られた全固体型電気二重層コンデンサーは小型で大容量の蓄電が可能であることがわかった。 各種親水性、疎水性π共役高分子で表面が被覆された白金電極を用いて水の電気分解(還元側:水素発生)を行った。その結果、(1)プロトンの還元は白金電極表面上で起こり水素の発生が起こること、(2)水素発生電圧の違いは、ポリマーの親水性、疎水性の違いに起因すること、さらに、(3)水素発生電圧の違いは、ポリマーのプロトン運搬能の違いが大きな要因となっていることがわかった。
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