ペロブスカイト型酸化物(LaLi)TiO_3における高イオン伝導性のメカニズムを解明し、本化合物よりもイオン伝導度が高い新規化合物設計のための基礎データを得るために以下の実験を行った。(1)高イオン伝導度を支配する因子の抽出(2)イオン置換による新規化合物の探索。その結果、以下の結果が得られた。 (LaLi)TiO_3における高リチウムイオン伝導を支配する主な因子は(a)キャリアー濃度(b)サイトパーコレーション(c)ボトルネックサイズ(d)B-サイトイオンの価数の4つであり、これらの因子を最適化することにより、より高いイオン伝導度を持つ化合物の設計が可能であることを見出した。さらにイオン置換の実験から、イオン置換に伴って置換イオンと溶媒イオンの大きさが異なる場合、溶質イオンの周りの局所歪みがボトルネックサイズを減少させ、全体として見掛け上格子定数が増加する場合でも置換量が増加すれば局所歪みの効果が支配的となり、イオン伝導度を低下させることを見出した。さらに、同じ大きさを持つ異なるイオンで置換した場合のイオン伝導度の解析から、B-イオンと酸化物イオンの間の共有結合性も重要なファクターであることを見出した。つまり、リチウムイオン伝導を支配するのは(a)〜(d)の因子に加えて、(e)局所歪み(f)B-Oイオン間の共有結合性であり、これらの因子を最適化あるいは意識しながら材質設計することにより、(LaLi)TiO_3に匹敵あるいは凌駕するイオン伝導体が得られる可能性を指摘した。さらに、これらの事実を認識するために分子動力学シミュレーションにより、イオン伝導について再現を試みた結果、完全イオン結晶ではイオン伝導は起こらず、共有結合性を取り入れないと、イオン伝導が現れないことも明らかになった。
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