固体への酸化物イオンの出入りにはガス-電極材-電解質界面での電極反応が重要なステップである。ガス電極反応は温度が低くなるほど速度が顕著に減少し、イオン導電体の応用範囲が著しく制限される場合もある。本研究は、高イオン導電性酸化物独特の機能を十分に活用した高性能SOFCのための高性能電極の開発を目的とし、(1)貴金属超微粒子触媒高分散担持によるSOFC用高性能電極の開発、(2)固体酸化物電解質のイオン導電率の効果に着目したガス電極反応の解析を行った。 1.貴金属超微粒子触媒高分散担持によるSOFC用電極の活性化 良好な混合導電性を示す酸化物(CeO_2)_<0.8>(SmO_<1.5>)_<0.2>(以下SDCと略す)を燃料極としてYSZ電解質に焼き付けた。SDC燃料極にRu超微粒子を高分散担持(0.1〜0.5mg/cm^2)し、水素及び合成ガス中の分極特性を検討した。その結果、(1)Ruの担持効果が低温ほど顕著に現れること、(2)SDC中の酸化物イオンと電子導電率の両方が高くなる燃料ガス中でRu-SDC電極の特性は最高になり、800〜1000℃、空気極に対して-0.9Vの電位で1A/cm^2を越える電流密度が得られることがわかった。 2.固体酸化物電解質上のガス電極反応の解析 より高性能な電極材料を開発する指針を得るために、SDC燃料極の分極性におよぼす電解質の酸化物イオン導電率の効果を解析した。イオン導電率の異なる種々のジルコニア電解質上でのSDC燃料極の分極特性を調べた。SDCのイオン導電率が充分高い900℃以上では電解質の影響を受けないが、800℃になると電解質導電率が高いほど分極が小さくなることを見出した。さらに、SDC表面にRu微粒子を高分散担持して表面電荷移動反応を活性化すると、800〜1000℃で電解質からSDCへのイオン供給が律速となり、交換電流密度が電解質導電率の1次に比例して増加することを明らかにした。
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