研究概要 |
本年度得られた研究成果は以下のようなものである。 1.層状物質のヘテロ構造を利用した有機ナノ構造の作製,ならびに異種のアルカリハライド基板上への選択成長性を利用した有機パタ-ニングの手法の確立が図られた。これらの手法の確立により,三次元方向に原子レベル制御した有機ヘテロ構造を構築する道が拓かれた。 2.近接場光学顕微鏡を試作する段階で、probe tipから放射される光は近接場の性格を持っているが、通常の遠視野観察では、高いFourier成分が失われるために、細かい空間情報が効率良く取り込めていないことが分かった。そこで、このような成分を測定するために、遠視野で「禁制光」となる光を収集できる近接場光学顕微鏡を設計、試作、稼働させた。これによって、遠視野での背景雑音無しに近接場の情報のみを見ることが可能になった。 3.導波モード薄膜の光誘起複素屈折率変化に基づく新しい全光空間変調の応答特性に及ぼす膜厚の分布など種々の因子を解析し、銅フタロシアニンを含む高分子薄膜でナノ秒パルスレーザー励起によりマイクロ秒以下の時定数で繰り返し応答を実現し、3桁以上の高速化が可能になった。 4.超高真空中で、シリコン単結晶基板上にC_<60>を一分子層(1nm)蒸着し,その上にRbを0.3nm蒸着したRb_xC_<60>錯体薄膜を走査型トンネル顕微鏡を用いてその場観察することに成功した。錯体膜中のある場所にC_<60>ダイマーとRbの共存するSTM像が認められ、その部分はRb_1C_<60>構造をとっていると思われる。
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