素構造の設計・作製と空間分布制御

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07241106
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 梶山 千里 九州大学, 工学部, 教授 (60037976)
• 研究分担者: 君塚 信夫 九州大学, 工学部, 助教授 (90186304)
• キーワード: 有機単分子膜 / ラングミュアーブロジェット膜 / 多段階クリープ法 / 大面積・低欠陥単分子膜 / 光導波路 / 相補的水素結合 / 分子認識 / 二分子膜

研究概要

1.脂肪酸の水面単分子膜の融点(Tm)と結晶緩和温度(Tαc)を面積弾性率と電子線回折像の水相温度(Tsp)依存性より決定した。脂肪酸分子間の反揆力が小さい場合には、Tsp<Tαc<Tmで「圧縮融着配向・結晶性単分子膜」、Tαc<Tsp<Tmで「ランダム配向・結晶性単分子膜」、Tm<Tspで「非晶性単分子膜」となり、又分子間反揆力が大きい場合には、Tαc<Tsp<Tmで「圧縮結晶化単分子膜」となるという有機水面単分子膜の新しい分類体系化に成功した。
2.脂肪酸単分子膜の新しい分類体系化に基づき、多段階クリープ法あるいは冷却結晶化法の組合せにより大面積・低欠陥単分子膜の構築に成功した。結晶学的に高品質の単分子膜を使用し、原子間力顕微鏡により脂肪酸分子配列と刃状転移の直接観察に世界で初めて成功した。
3.脂肪酸の大面積・低欠陥単分子膜を累積したLB膜は、一般の単分子膜作製法である連続圧縮法により調製したLB膜と比較してその表面は著しく平坦であり、LB膜表面光散乱による光強度の減衰の著しく低い光導波路を構築することに成功した。
4.相補的水素結合部位(バルビツール酸)と機能性発色団が連結(共役)した新規サブユニット分子の設計・合成を行った。芳香族発色団としては、フェニル基、ナフタレン、アントラセンやピレンを用いた。
5.親水基を含むイソシアヌル酸誘導体とメラミン長鎖誘導体(疎水部)を水中で混合すると、水溶液中における水素結合分子認識・疎水的相互作用を駆動力として、自発的に二分子膜組織が構成された(自律組織化)。また、イソシアヌル酸誘導体を一種類、またメラミン誘導体を二種類用いたところ、混合直後には3成分の混合複合膜が形成されるが、時間の経過とともに2種類の会合体へ分離することが明らかとなった。速度論的に安定な3成分複合体状態から熱力学的に安定な2成分複合体への移行は、水素結合の組み替えを伴うことが分かった。

研究成果

• [文献書誌] T. Kuri: "Exact Evaluation fo Transfer Ratio of Monolayer Based on Area-creep Measurements." Langmuir. 11(1). 366-368 (1995)
• [文献書誌] T. Kajiyama: "Direct Observation of Edge Dislocation in Lignoceric Acid Monolayer Based on Atomic Force Microscopy." Chem. Lett,. 1995. 241-242 (1995)
• [文献書誌] T. Kajiyama: "Novel Concept for the Aggregation Structure of Fatty Acid Monolayers on the Water Surface and Direct Observation of Molecular Arrangements in their Monolayers." Bull. Mater. Sci.,. 18(4). 375-384 (1995)
• [文献書誌] K. Kuriyama: "Molecular Aggregation State-Photopolymerization Behavior Relationship of Lithium 10, 12-Heptacosadiynoate Monolayer." Langmuir. 11(9). 3536-3541 (1995)
• [文献書誌] N. Kimizuka: "Tube-like Nanostructures Composed of Networks of Complementary Hydrogen Bonds." J. Am. Chem. Soc.117. 6380-6381 (1995)
• [文献書誌] T. Kunitake: "Formation of a Novel CdS Cluster in an Organic Multibilayer Template: A Case of an Organic/Inorganic Superlattice." J. Phys. Chem.99. 3736-3742 (1995)
• [文献書誌] T. Kajiyama: "Proc. Japan Acad.," Direct Observation of Surface Morphology and Surface Viscoelastic Properties of Polymeric Solids Based on Scanning Force Microscopy., 6 (1995)
• [文献書誌] T. Kajiyama: "MRS Bull.," Novel Concepts of the Aggregation Structure of Organic Monolayers on the Surface of Water., 7 (1995)