まず既存のπ-d相互作用系の研究として、ヨウ素置換DCNQI銅塩の磁性と低温電子比熱の間に相関があって、この系でπ-d混成による遍歴電子磁性が生じていることをほぼ確立した。次に、π伝導電子系とd電子(または局在性の強い電子系)との相互作用をもつ新しい系の開発を目的として、TCNQおよびその類縁体などの有機分子と希土類金属イオンの組合せによる伝導性物質の探索を開始し、現在は種々の組合せのスクリーニングをおこなっている。一方、局在スピン磁性と伝導電子の関わりという観点から、DEDと呼ばれる新しい有機分子のPF_6塩が低温領域で異常な電子物性を示すことを見出し、磁化率や磁場中の電気伝導と比熱の測定によって希薄近藤効果が起こっている可能性を検討している。また、π-d相互作用の強さやd電子の局在性を制御して新規物性を発現させる手段としての光照射の役割に着目し、低温高圧下での使用を目的とする光伝導測定系を製作した。
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