一部の有機ゲルは温度変化に伴って体積相転移を示す。本研究では、ゲルに金属錯体の超構造を導入したり、ゲルの体積変化速度を促進するための超構造を設計し、より精密なゲルの電子移動反応および物性の制御、相転移速度や体積変化率の制御などを行うことを目的とした。熱相転移を示すポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)ゲルにフェロセニル基を導入し、酸化還元活性なゲルを合成した(NIPA-VFゲル)。このゲルは水溶液中で、低温側では膨潤し、高温側では収縮した(光学干渉顕微鏡PMIMを用いて観測)。また、30℃付近においては、フェロセニル基を電気化学的に酸化・還元することによって、ゲルの体積を制御できることがわかった。また、NIPA-VFゲルのフェロセニル基のかわりにピリジンなど、金属イオンに配位結合可能な官能基を導入することにより、酸化還元活性官能基を交換可能なゲルを合成することができた。ルテニウムEDTA錯体などを配位結合により取り込ませたゲルが、NIPA-VFゲルと同様の特性をもつことが示された。このような超構造の導入により、ゲルの物性変化を誘起する酸化還元電位を制御したり、解媒能、エレクトロクロミック特性などの新たな機能を導入することが可能になった。また、高分子鎖どうし、高分子鎖と溶媒との相互作用が異なる数種類の酸化還元活性ゲルを合成し、ゲルの構造と体積変化率、体積変化速度、電子伝達速度などについて調べた。それにより、高分子鎖構造を最適化することができた。
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