分子内に直交因子を有するアントラセンのビスレゾルシン誘導体は2次元(シート状)の水素結合ネットワークを形成し、生じた大きな空孔には種々のゲスト分子がとりこまれる。これに対して、アントラセンのモノレゾルシン誘導体は1次元(テープ状)の水素結合ネットワークを形成し、生じたポリレゾルシン鎖がお互いに“からむ"(interpenetrate)結果、アントラセン環は密に積層し、小さな空孔を生じる。 2次元および1次元ネットワークは機能上の大きな差異をもたらす。第一はアントラセン環の光化学的物件である。2次元ネットワークにおいたはアントラセン環は12-13A離れているため単量体(monomer)蛍光のみが認められる。これに対し、1次元ネットワークではアントラセン環が対面積層しているため、エキシマー蛍光のみを発する。ネットワークの次元性により、発光挙動が制御できることを示している。 第二点は空孔サイズの制御である。2次元系での大きな空孔には、例えば安息香酸アルキルのとりこみにおいて、大きなアルキル基が優先的にとりこまれる(例えばイソブチル/メチル=70/1)。1次元系での小さな空孔には、逆に、小さなアルキル基が選択的にとりこまれる(メチル/イソブチル=1/30)。ゼオライトでみられる空孔サイズのコントロールが“有機ゼオライト"においても可能であることを示している。 このように、相互作用の次元性のコントロールが機能設計において重要であることが判明した。
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