研究概要 |
C末端にクラウンエーテルを結合した疎水性ヘリックスペプチドを幾つか合成した。また、鎖長の長い疎水性ヘリックスペプチドの合成も行った。合成は液相法により行い、生成物の同定は、NMRによって行った。クラウンエーテルを結合したペプチドを,気/液界面に展開してπ‐A曲線を調べた。水相にK^+あるいはBa^<2+>が存在する場合には、等温曲線は表面積の大きい方へシフトした。これは、クラウンエーテルユニットと金属イオンとの間で錯体形成が起こり、錯体間の静電反発のための分子占有面積が増大したためと考えられる。このようなシフトは、Li^+やCa^<2+>イオンの存在では観測されず、クラウンエーテルユニットの金属イオン選択性は保存されていた。また、錯体形成の平衡定数は水中での値に近く、ヘリックスペプチドとクラウンエーテルユニットは、水中に存在していると考えられる。ペプチド単分子膜の圧縮にともない、表面圧はマウンドを経て上昇し固体膜となるが、このときの分子占有面積は約300Å^2であり、ヘリックス軸は気/液界面に平行であることがわかった。 鎖長を16量体から24量体に伸ばした、両末端を保護したペプチドを、気/液界面に展開してπ-A曲線を調べた。クラウンエーテルを結合したペプチドと異なり、圧縮にともなうマウンドは観測されず、固体膜になりやすいことが示された。また、このときの分子占有面積は73Å^2であり、ヘリックス軸は気/液界面に垂直であることがわかった。24量体ペプチドの単分子膜を石英基板上に移し取り、CDスペクトルを測定したところ、α-ヘリックス構造を示すダブルミニマム型であった。これらより、24量体ペプチドは気/液界面でα-ヘリックス構造を形成し、目的とする垂直配向をとっていると考えられる。
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