フィブロネクチン(FN)の自己会合ドメインを利用して、任意の蛋白質を細胞外マトリックスに不溶化する新しい技術の開発を行った。我々は、FNのN末端70kD領域とC末端37kD領域を連結した組換え蛋白質(以下、“ミニフィブロネクチン"(miniFN)と呼ぶ)が細胞外マトリックスへのアセンブリー活性を保持していることを既に見いだしている。このminiFNのC末端部にレポーター蛋白質として発光蛋白質エクオリンを連結したキメラ蛋白質の組換え遺伝子を作成し、この組換え遺伝子を培養細胞に導入・発現させた。その結果、このキメラタンパク質はフィブロネクチンと同様に2量体としての細胞によって合成・分泌され、培養細胞の細胞外マトリックスに不溶化されることが判明した。また、このキメラタンパク質の発光活性を測定したところ、この蛋白質は溶液中でも細胞外マトリックスに不溶化された状態でもエクオリンの発光活性を保持していることが確認された。これらの結果は、miniFNのC末端側に連結することにより、様々な機能蛋白質をその生理活性を保持したまま細胞外マトリックスに不溶化できることを示している。この点をさらに確認するため、細胞増殖因子のひとつであるtransforming growth factor(TGF)-αをminiFNとキメラ化した蛋白質の発現ベクターを構築し、培養細胞で発現させた。このキメラ蛋白質は予想通り細胞外マトリックスへのアセンブリー活性を保持しており、さらにTGF-αの細胞増殖促進活性も有していた。今後、このTGF-α/miniFNキメラ蛋白質の機能解析をさらに進める予定である。
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