本研究は、超臨界二酸化炭素を溶媒として用い、新規な光触媒反応系を探索し解析することを目的とする。このため、内部攪拌可能な高圧光照射セルを試作し、光還元反応系と酸化反応系を検討した。 まず超臨界二酸化炭素/水/TiO_2触媒系での二酸化炭素の光還元反応を検討したが、顕著な効果が今のところ認められておらず研究を続行している。 ついで、低温におけるレーザー励起によるシクロヘキサンの自動酸化系を超臨界二酸化炭素媒体中で検討した。このため、高圧における基質および酸素、さらに基質-酸素の相互作用下における超臨界二酸化炭素中の光吸収挙動、共存する水による媒体物性の変化、触媒の溶媒状態、および触媒自身の光吸収や相平衡への影響、反応の進行に伴う相挙動の変化などに観点を起きつつ検討を進めた。照射用の光源としてはKrFエキシマーレーザーを用いた。シクロヘキサンと酸素を含む高圧二酸化炭素の光吸収は系の圧力の影響を強く受け、100atm程度の圧力下の光吸収は主に酸素のヘルツベルグ帯への吸収であると判明した。反応の主要生成物はシクロヘキサン、シクロヘキサノンである。全圧の増加にともない生成物収量が増加するが、これは主に光吸収量の増加のためであり、光量子収率は大略0.2程度であった。これはエチレンなどの量子収率の数倍であり、基質にによる反応性の差異があることが明らかとなった。さらにコバルト塩を中心として触媒添加効果を検討したが、今のところ顕著な効果は得られていない。さらに温度を上昇させるなどの条件変化を試みている。 本年度の結果では顕著な触媒効果は見いだせていないものの、系における酸素や基質の光吸収挙動を考えあわせ、超臨界二酸化炭素が一つの溶媒系となり得ることを明らかにした。
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