研究概要 |
今年度は新規有機ヘテロ2核/クラスター錯体として、エチル基と1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(以下dpeと略)を配位子をもちPtとMo、W、Mn、Coの組み合わせからなる二核錯体の合成を行った。さらにPd上にメチル基をもち、Mo、W、Coを含む二核錯体を合成・単離することができた。また、ナフサ改質触媒のモデルとなる有機Pt-Re-S錯体の合成を行った。さらに、チオラト基を有するチタノセン錯体とノルボナジエン配位子をもつ有機Pt錯体との反応により、チオラト配位子がPtとTiに架橋した2核錯体の合成・単離に成功した。錯体の同定はIR、NMR、元素分析、化学反応性により行った。ここで、(dpe)MePd-Co(CO)_4、Me_2Pt(μ-SMe)_2TiCp_2および有機Pt-Re-S錯体では良好な単結晶が得られ、X線構造解析により分子構造を決定することができた。メチル基とPdを含む(dpe)MePd-Co(CO)_4では室温、1気圧という条件下でCO挿入反応が進行し対応するアシル2核錯体を収率80%で与えた。また、CO挿入反応はCo(CO)_4部分により促進されることがわかった。さらに、dpeを配位子としてエチル基とPtを含む二核錯体では、熱分解条件下で還元的脱離よりもβ-水素脱離が速やかに進行し、エチレンを生成することを見いだした。特に、Pt-Mo、Pt-W錯体ではエチレンとともに対応するヒドリド二二核錯体が生成し、これを単離・同定した。この反応は二核構造を保持したままβ-水素脱離が進行する例である。動力学的な検討から、このβ-水素脱離反応は会合型機構で進行するものと推測された。
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