研究概要 |
酸化チタン光触媒を用いて、希薄濃度の有機気体分子を効率良く酸化分解させるには、対象とする有機分子に対して吸着能を有するものを担体に用いて酸化チタン光触媒を調製すると効果のあることを見出している。この際の担体の役割は、希薄濃度の有機分子を吸着させて酸化チタン触媒近傍における反応基質の濃度を向上されることにあると考えられるが、担体に吸着した反応基質が担持されている酸化チタンに移動できなければ、酸化分解反応の向上は望めない。このような観点から、担体に吸着した有機分子の拡散に焦点を合わせて研究を進めた結果、触媒上での反応基質の拡散の難易によって、酸化分解速度が決定させることが明らかになった。 (1)担体として数種のゼオライト,アルミナ,シリカ,活性炭を用いて、50%の酸化チタンを担持した光触媒を調製した。反応基質にプロピオンアンデヒドを用い、各光触媒上における反応基質の酸化分解速度と触媒上への反応基質の平衡吸着量の関係を求めると、適度の吸着量を有する光触媒を用いたときに最大分解速度が達成される。 (2)平板状の薄膜光触媒を用い、その片隅のみに光照射を行い、反応生成物としての二酸化炭素の発生挙動を光照射時間の関数として調べ、これが担体に吸着した反応基質が拡散することによって起こると仮定して、拡散モデルをたて、デジタルシュミレーションによって拡散係数を決定した。その結果、分解反応速度と拡散係数との間に相関関係があり、拡散係数のおおきい光触媒では、反応基質の酸化分解速度が大きいことが定量的に明らかになった。すなわち、担体の反応基質に対する吸着性により、酸化チタン近傍の基質濃度が影響され、これが大きいものが望ましいが、あまり吸着力が大きいと拡散し難いために反応速度がかえって低下するということが明確になった。
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