気相輸送法によって緻密なゼオライト膜の得られる条件を探索し、その分離特性を検討した。SiO_2/Al_2O_3=25、所定のpH(=11〜13)のアルミノシリケートゲルを調製した。得られたゲルを、アルミナ支持体の上に製膜し、乾燥した。これを、トリエチルアミン、エチレンジアミン、水の混合蒸気雰囲気下0-4日間、453Kに保った。 ガラス基板上に製膜して363Kで乾燥後、クラックあるいは剥離の有無によりゲルの緻密さを評価した。ゲルの緻密さは溶液のpHに依存した。高pHほど乾燥ゲルの比表面積は小さくなり、ケイ酸ナトリウムを用いた場合pHが11.6以上で、コロイダルシリカを用いた場合12.0以上で、クラックのない薄膜状乾燥ゲル膜が得られた。 上記により決定した最適な条件にて、アルミナ支持体上に製膜し、気相輸送法により結晶化した。ケイ酸ナトリウムからはANAが、コロイダルシリカからはMORが得られた。コロイダルシリカで表面処理すると、ケイ酸ナトリウムからはFER、コロイダルシリカからはMFIが得られた。 ゼオライト膜表面をSEMにより観察したところ、表面のゼオライト粒子層には大きな空隙が存在することがわかった。1日目ですでにアルミナ支持体の細孔の中にもMORが生成しているようにみえる。2日目になるとアルミナ細孔内の結晶数が増え、4日目にはアルミナとMORの界面付近の細孔内は完全に埋まり、約10μm程度の緻密層が形成された。 ベンゼン、p-キシレン0.86:1混合物の浸透気化分離を行った。分離係数は160以上となり、、気液平衡の値11.3を大きく上回った。MOR膜のピンホールの有無を検討する目的で、TIPBの浸透気化分離を行ったが、TIPBは透過しなかったことから、膜内にピンホールは存在しないと結論した。MORの細孔入口で形状選択性が発現したものと考えられる。
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