ファインな触媒反応の制御のため、酸塩基両機能性触媒の設計・開発を試みた。本年度は以下の成果が得られた。 (1)第二成分添加による酸塩基両機能性酸化ジルコニウムの高表面積化 酸化ジルコニウムの酸塩基両機能性を維持しつつ焼成に伴う表面積低下を第二成分添加により抑制することを試みた。各種金属硝酸塩20種を水和酸化ジルコニールに添加し、乾燥・焼成(300〜900℃)後、BET表面積を測定した。添加量は酸化物換算で0.5wt%とした。焼成に伴う表面積減少は次式で整理できた。 表面積=a x exp(-10^<-3>b x焼成温度) bの値が小さいほど焼成に伴う表面積の低下が小さい。800℃焼成後の無添加試料の表面積は12m^2g^<-1>であるのに対し、Sr添加試料では27と2倍以上の表面積が得られた。イオン半径の大きい金属カチオンの添加は定数bを小とし、高温における表面積の低下をより抑制する傾向が認められた。 (2)新規酸塩基両機能性物質の開発 テトラメトキシシランを用いるCVD法によりMgO表面を部分的にシラン化し酸点を組立てることにより、酸塩基両機能性SiOx/MgOを合成することを試みた。両機能性発現の有無はトリエチルアミンからのアセトニトリル生成速度を比較することにより行った。シラン化によりアセトニトリルの生成速度の大幅な増大が得られたが、これはシラン化により酸性質が新たに付与された結果、トリエチルアミンからの脱アルキル化反応の経路が開かれ、MgO本来の塩基性との協力により脱アルキル-脱水素の全反応を進行せしめ得たものと理解できる。
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