通常の不均一触媒系は、半無限に広がった表面上で局所的に相互作用が起こる系であるが、多孔性物質では、さらに反応分子を囲む多くの細孔構成原子から相互作用を考慮することが計算において必要になる。計算の方法論的な観点からは、基本的に周期境界条件が課せられ、非常に大きな単位胞をもつ系であり、巨大結晶起動法計算がどこまで実行可能であるか、周辺部の原子による寄与をどのように近似することができるか、という点でのブレイクスルーが必要となる。 β-cristobaliteおよびZSM-5の結晶軌道法計算 ZSM-5の電子構造およびその反応場での反応のシミュレーションが最終目的であるが、ZSM-5を(クラスターモデルによらないで)まるごと扱うために、より簡単な構造をもつβ-cristobalite(シリカ担体のモデル)の結晶軌道法計算も併せて行った。 拡張Huckel法計算 β-cristobaliteの単位胞はSi_8O_<16>で全てのSiおよび0原子は等価な環境にある。計算された電荷はSi:+2.88、0:-1.44であった。ZSM-5の単位胞はSi_<96>O_<192>から成り、サイトにより環境の異なる原子があるが、電荷はSi:+2.88〜+2.90、0:-1.44〜-1.47と、ばらつきは小さく、またβ-cristobaliteの結果に非常に近い値が得られた。これらの電荷は、酸化数の概念には近い値であるが、セルフコンシステントに決められたものではないので、分極を過大評価している。ωテクニック(拡張Huckel法の枠内での繰り返し計算法)を行った結果の電荷は、β-cristobaliteの場合Si:+0.76、0:-0.38、ZSM-5の場合Si:+0.70〜+0.72、0:-0.32〜-0.39と、ずっと小さな値となり、β-cristobaliteでのDF法による電荷Si:+0.56、0:-0.28に近づく結果が得られた。
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