ロジウム原子の回りの環境がほぼ同一である二つの化合物[{(η^3-C_4H_7)_2Rh}_2(V_4O_<12>)]^<2->と(η^3-C_4H_7)_2Rh(acac)を合成し、それらの求核試試剤に対する反応性を比較した。その結果[{(η^3-C_4H_7)_2Rh}_2(V_4O_<12>)]^<2->ではアリル基のカップリングが選択的に高収率で起こるのに対し、(η^3-C_4H_7)_2Rh(acac)ではその様なカップリング反応は全く起こらない事が明らかになった。V_4O_<12>は単なる酸素をドナー原子として持った配位子として働いているのではなく、有機ロジウム化合物の反応性に対して特有の影響を与えていると考えられる。アリル基のカップリング反応はシリカの表面上に担持された有機ロジウム化合物で見られる反応である事を考えると、V_4O_<12>の様な分子性酸化物は、組成の面のみならず、反応性の面からも通常の酸化物に類似した性質を持つと言える。 分子性酸化物上に担持された有機金属化合物の示すこの様な特異な反応性は、その動的挙動に依る所が大きいと考えられる。そこで有機金属がV_4O_<12>上に担持された一連の化合物を合成し、多核ダイナミックNMRの技術を用いてそれらのダイナミクスを調べた。その結果、有機金属部分がV_4O_<12>上をピボットしている事が明らかになった。 以上の成果に加え、本研究では、これまで存在が示唆されながら実体が全く明らかになっていなかったポリアンチモン酸イオンの単離に初めて成功し、その構造を明らかにした。この化合物は[Sb_8O_<12>(OH)_<20>]^<4->と言う分子式を持つ。
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