進化的探索の理論

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07243104
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 小林 重信 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (40016697)
• 研究分担者: 山村 雅幸 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助手 (00220442) ; 玉置 久 神戸大学, 工学部, 講師 (10227267) ; 出口 弘 中央大学, 商学部, 助教授 (60192655) ; 寺野 隆雄 筑波大学, 社会工学系, 助教授 (20227523) ; 片井 修 京都大学, 大学院工学研究科, 教授 (50089124)
• キーワード: 進化的探索 / 創発的探索 / コード化 / 交叉 / 騙し(だまし)問題解析 / SXX(Subtour Exchange Crossover) / TSP / JSP / 多目的最適化

研究概要

本研究では、進化的探索によって創発的探索を実現するためには、形質遺伝に優れたコード化/交叉および多様性維持に優れた世代交替モデルの設計が必要であるとの立場から、理論的および実験的な研究を推進することを目標に、研究活動を展開し、本年度は以下に示す研究成果を得た。
1.騙し問題における交叉の効果について:従来、進化的探索の理論および仮説として、スキーマ定理(Schema Theorem)に基づくBB仮説(Building Block Hypothesis)が知られているが、スキーマ定理に基礎をおくBB仮説は進化的探索のダイナミックスを正しく記述していない。本研究では、吸収マルコフ解析及びpopulation dynamicsの手法を使って解析し、その結果、騙し(だまし)問題において交叉が有効に働く範囲を騙し境界として理論的及び実験的に明らかにした。
2.形質遺伝に優れたコード化/交叉について:進化的探索の特徴は、動的交叉近傍を用いた創発的探索にある。創発的探索とは交叉が有効に働いて探索に飛躍が生じる現象をいう。創発的探索を実現するためには、形質遺伝に優れたコード化/交叉の設計が必要である。本研究では、TSPを対象にSXX(Subtour Exchange Crossover)と呼ばれる形質遺伝に優れた交叉方法を考案し、2重円TSPに適用して、その効果を確認するとともに、JSPに対しても使い回しが利くことを確認した。
3.多目的最適化問題におけるパレート最適解の導出について:多目的最適化問題ではパレート解集合を求めることが重要な課題とされるが、従来研究のVEGA[Shaffer85]やMOGA[Fonseca93]では集団サイズの爆発が問題とされていた。本研究では、“各世代において相互にパレート最適な個体のみ次世代への生存を許し,非パレート最適な個体は淘汰する"非パレート解淘汰戦略を提案して、決定木生成問題やポートフォリオ選択問題への適用を通じて有用性を確認した。

研究成果

• [文献書誌] Kobayashi, S., Ono, I., Yamamura, M.: "An Efficient Genetic Algorithm for Job Shop Scheduling Problems" 6th Int. Conf. on Genetic Algorithms. 506-511 (1995)
• [文献書誌] 片井,堀内他: "連続変量・ファジィ制約を含む制約充足問題解決のための自律分散システム" 計測自動制御学会論文集. 31. 640-649 (1995)
• [文献書誌] Terano, T., Ishino, Y.: "Data Analysis Using Simulated Breeding and Inductive Learning Methods" IJCAI'95 Workshop on Data Engineering and Inductive Learning. 60-69 (1995)
• [文献書誌] 出口弘: "ネットワーク上の改善と進化の利得と遺伝アルゴリズム" 経営情報学会誌. 2. 51-71 (1994)
• [文献書誌] 玉置・森・荒木: "遺伝アルゴリズムを用いたパレート最適解集合の生成法" 計測自動制御学会論文集. 31. 1185-1192 (1995)
• [文献書誌] 山村雅幸・宮崎和光・小林重信: "強化学習の特徴と発展の方向" システム/制御/情報. 39. 191-196
• [文献書誌] 山村雅幸・小林重信: "遺伝的アルゴリズム2(北野宏明編),第4章" 産業図書, 36 (1995)
• [文献書誌] 筒井茂義: "遺伝的アルゴリズム2(北野宏明編),第2章-" 産業図書, 33 (1995)