複雑な自然現象や生命現象、社会現象などを多数の振動子、カオス素子、興奮性素子などが様々な様式で相互作用する系、すなわちアクティブエレメント集合体として捉え、数理とモデル実験系の両面からアプローチを行った。素子のタイプと結合様式の組み合わせを考えると、結合様式としては、拡散結合、全結合、中間距離結合などがある。また、素子としては、空間的に運動性を持つ素子や興奮・抑制性素子の場合にどのような振る舞いが得られるかこれまであまり知られていなかった。運動素子の集団のモデルを作り、解析とシミュレーションを行なった。相互作用する質点系に向きの内部自由度を付加したモデルにより、これまで知られていない様々な動的な振る舞いが見い出された(編隊、旋回、迷走、蚊柱など)。これらは、動物の群れ形成のモデルとも関連しており、無次元量を導入することにより集団運動の転移現象を説明した。また、実際の動物の次元解析からモデルとの比較的よい一致を見い出した。 さらに、興奮・抑制(activator-inhibitor)素子の集団モデルを考え、一つの素子だけでは安定だが、平均場で結合すると(globally coupled system)、二つの状態に分かれ、二つのクラスターに属する要素数の比率は或る範囲で一定に保たれる現象を見い出した。この系は、細胞集団の分化や社会的生物集団における分業などの比率制御のモデルとも考えられる。
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