研究概要 |
高度な熟練作業を機械が人間に代わって実行することを目的として,本研究では能動的な学習能力,すなわち人間の介入を受けることなく多種類のセンサとアクチュエータを有する機械自らが獲得された基本的な行動概念からタスク実行時の現実世界との干渉を通してより高度な技術を創発していくことのできる能力として運動スキルの熟達プロセスのモデル化を行った.主な成果としては以下の通りである. (1)人間オペレータが複雑・大規模なシステムを制御する際に実行している認知過程のモデリングとして,確率推論モデル(ベイジアン・ネットワーク)を用いた表現法と知識の獲得アルゴリズムの開発を行った. (2)スペクトラムデータに対する信号理解のデモンストレーションからの知識獲得手法として遺伝的アルゴリズムを用いた手法を開発した. (3)自律移動ロボットが環境中を走行しながら獲得される知覚ならびに自らのとる行動のインタラクションから生成される環境概念についての帰納的構成法として遺伝的アルゴリズムを用いた手法を提案し,環境中の通路を通過する際の通路形状の認識についてのシミュレーション実験を行った. (4)ある環境中に放たれたロボットが盲目的な行動の指向により衝突や回避行動を繰り返す中から,段階的に自らの知覚機能を洗練化させ,より大局的な目的に指向した行動戦略に向けて,環境に対する注視点を絞り込んでいく熟達過程を進化型計算により実現した. (5)環境中の移動物体からの特徴抽出を可能にするための知覚システムを備品の2次元リアルタイム動作解析装置を用いて構築し,人間の運動ならびに他者エージェントの実行する挙動の観察情報の取り込みが可能となった.今後シミュレータ上で(3),(4)のプログラムをロボット実機に搭載し,この知覚システムを用いることによって,現実世界でのロボットの進化的スキル創発のプロセスのモデル化が可能になるものと考える.
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