研究概要 |
手の探索運動のコントロールと対象の知覚にかかわる感覚信号を中枢がどう処理するのかを調べた。 中心後回で両側の手、上肢、肩の統合が起こることを明らかにした(Iwamura et al 1994,1995b, c, Taoka et al 1995)。手指による対象の把持に伴って発火するニューロンを1、2指でのつまみ(precision grip)、2-5指と手掌尺側による把持(power grip)、2-5指先によるひっかき(scratching)又は触り(touching)、腕を対象に向かって伸ばす(reaching)などに分類した。 エッヂの有無、四角、球などの特徴、垂直面、対象の材質、固定された物または可動のものなどに選択性のあるニューロンがあった。いくつかのニューロンは手が自己の体の一部に触れさせられても発火しなかった。すなわち、対象の認識においては自己と他の区別の過程が必要であることが示唆された(Iwamura et al 1995a)。 体性感覚野の多くのニューロンが、サルが与えられた刺激に注意を払ったとき、興奮あるいは抑制された。すなわち、感覚野ニューロンが末梢からの刺激に受動的に応答するのみでなく、より上位の中枢からの選択的制御を受けていることが推察された(Iriki et al 1995)。 視覚刺激に応じるニューロンの中に自己の手のイメージに反応し、道具使用時にその受容野が拡大するものがあった。すなわち長さ約30センチの棒の先に直交する7センチの板片のついた熊手状の道具で、手が到達しない距離にあるエサを引き寄せて取るようサルを訓練して、ニューロン活動を記録したところ、その受容野に向かう視覚刺激に加えて、棒に向かう刺激にも応答するようになることが見出された(未発表)。
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