研究概要 |
本研究では、人工現実感技術を用いた体験と、それによって生ずる各種の感覚や概念の形成を障害児(者)の「新現実感」として提唱することを試みた。この成立機序とその成立を促進する要因を解明することで、例えば障害ゆえの副次的な認知的障害をも最小限にするような新しい指導方法を確立することにつながると期待された。運動障害などに対応するために、体の向きや手指の関節の動きをデジタル化してリアルタイムにコンピュータに取り込む、Polhemus社3次元センサFastrak、P&G社のゴニオメータ(A/D変換付14軸分)、音響3次元化装置CrystalRiverEngneering社Acoustetron2,Alphatronと3DライブラリソフトSuperscape社のVRTとSDK、HMDとしてKAISER Electro-Optics社の500-HR-pv、制御用のGateway社P5-J90でシステムを構成した。視覚障害のある利用者を対象に3次元音を使ったインタラクティブな情報提示システムの役割について基礎的な臨床データを収集し、実際のシステムの動作と、実験参加者の口頭による報告を比較した結果、システムがシミュレートした3次元音と、実験に参加した者の報告は、高率で一致する結果を得ている。視覚障害者は、晴眼者に比べて必然的により多くの情報を聴覚,触覚,嗅覚やその他の感覚で補い生活しているが、特に、聴覚は重要な情報源であるとされる。しかしながら、音響(音声の人工実感)を手掛かりにしたインタラクティブな学習環境は、これまで、ほとんど実用化されたものが 無く、人工実感技術の応用への大きな期待が実験の参加者から報告された。
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