アフリカに棲息するアリの仲間(African weaver ants)には、互いの身体を結合して鎖状になり、ギャップのある場所に到達したり、一匹では運べない物体を協調的に運搬する習性を持つ種がいる。これは、同じ機能を有する個体が群としての知的行動を行っている好例と言える。本研究では、このような群行動をロボット工学的観点から考察を行った。すなわち、同一の機能を持つセルロボットが協調的に行動することによって、一つの構造体を形作り、全体として秩序ある群行動を生成する自律分散型ロボットについて考察した。 本年度は、セルロボットが移動・結合・分離の動作を行うことによって、力学環境に対して適応的に構造物を構築・改変するためには、セルロボットにどのような機能を与えればよいかについて検討を行った。まず、構造体を変化させる時に重要なことは、構造自体を崩壊させないようにセルロボットが行動することである。そこで、構造を構築しているセルロボット群では、セルロボット1個が選択されて行動するアルゴリズムを提案した。さらに、他のセルロボットが落下することを回避しながらセルロボットが分散的な情報処理で最短経路を探索可能なアルゴリズムを提案した。 提案したアルゴリズムの妥当性を調べるために、コンピュータシミュレーションを行った。シミュレーション問題として、車輛のような移動荷重が橋のない対岸へ渡るために、セルロボットが橋状の構造物を自動的に構築し、移動荷重が対岸へ渡り終わった後、再び元の場所へ戻る群行動を生成することとした。シミュレーションを行いながら、これを実現するためのセルロボットの情報処理機能について詳しく考察した。その結果、セルロボットに同一の分散的な情報処理機能を与えることによって、このような知的行動生成が実現可能であることを示した。
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