有機イオン塩系高性能非線形光学材料の開発

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07246101
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 中西 八郎 東北大学, 反応化学研究所, 教授 (50240651)
• 研究分担者: 戒能 敏邦 東北大学, 反応化学研究所, 教授 (00281709) ; 加藤 政雄 東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (70214400)
• キーワード: 2次分子超分極率 / ハイパーレイリー散乱法 / イオン性色素 / チェーンドクロモフォア / オリゴ(p-ベンゾエ-ト) / DAST / 電気光学サンプリング / 結晶成長

研究概要

1.芳香族イオン性有機化合物であるスチルバゾリウム誘導体における大きな二次分子超分極率βの起源について、PM3法を用いた量子化学計算結果、およびハイパーレイリー散乱法によるβの評価、吸収極大波長とその吸光係数の測定結果などから、二準位モデルに基づいて、対応する中性種として選択したニトロスチルベンと比較して考察した。その結果、スチルバゾリウム誘導体においてβの増大に最も寄与しているのは、励起状態と基底状態の双極子モーメントの差であることが明らかとなった。また、吸収端が可視域にかからない化合物についてもβの評価を行ない、p-ニトロアニリンよりも高性能なイオン種を見い出した。
2.可視光領域が透明な新しいNLO活性クロモフォアである“Chained chromophore"として、オリゴ(p-ベンゾエ-ト)を活性基とするホスト・ゲスト型ポリマー並びにビニルポリマーを合成し、予想したNLO特性が得られることを明らかにした。さらに、より高いNLO特性の発現を目指して、クロモフォア電場配向性の向上のための分子構造の改良について検討している。
3.高い非線形光学効果を有するDASTの電気光学サンプリング(EOS)応用のため、高品質結晶の育成を進めている。この結果、DASTの良質結晶をEOSに用いた場合、KTPの4倍の感度で高速信号の計測が達成でき、側鎖型光非線形高分子に比較しEOSへの適用性の可能性が大きいことが判明した。しかし、微分干渉顕微鏡観察の結果、多くの結晶に微小の段差成長(コンター)が観測され、結晶成長法の改善が必要であると判明した。

研究成果

• [文献書誌] 段,木村,岡田,及川,松田,加藤,中西: "Organic species with short cutoff wavelength and large second-order hyperpolarizability" Mol. Cryst. Liq. Cryst.280. 1-10 (1996)
• [文献書誌] 段,小波,岡田,及川,松田,中西: "Second-order hyperpolarizabilities of stilbazolium cations studied by semiempirical calculation" J. Phys. Chem.100. 17780-17785 (1996)
• [文献書誌] 加藤,神田,木村,松田,中西: "Synthesis of polymers bearing azo-dye chromophore with photocrosslinkable moiety for nonlinear optics" Polym. Bull.36. 407-414 (1996)
• [文献書誌] 加藤,大野,石井,松田,中西: "Preparation of Langmuir-Blodgett films of methacrylate copolymer bearing azo-dye chromophores and their nonlinear optical properties" J. Photopolym. Sci. Technol.9. 87-92 (1996)
• [文献書誌] 遊部,大原,横浜,戒能: "Low power all-optical switching in a nonlinear optical loop mirror using chalcogenide glass fiber" Electron. Lett.32. 1396-1397 (1996)
• [文献書誌] 遊部,大原,横浜,戒能: "Fabrication of Bragg grating in chalcogenide glass fiber using the transverse holografic method" Electron. Lett.32. 1611-1612 (1996)
• [文献書誌] 加藤 他 共著: "光機能性高分子材料の新展開" シ-エムシ-, 273 (1996)