将来の高速・高密度光記録用の光源として500nm以下の波長領域で十分な強度を発することのできる素子の模索が行われている。この方法には主として二つの流れがある。一方は禁制帯幅の大きな半導体材料を半導体レーザ構造に用いる方法で、他方は比較的短波長・高出力の半導体レーザと非線形光学結晶とを組み合わせた2次高調波発生(SHG)による方法である。前者はコンパクトで実装等には従来技術との整合性が良いが、半導体材料そのものによって到達可能な波長領域が制限される。後者は系がやや複雑になるものの、半導体よりは困難さの少ない非線形結晶さえあれば、前者の方法で到達した波長の少なくとも2分の1の波長領域まで到達できる。このような観点から、半導体レーザと非線形光学結晶の組み合わせは究極の短波長光源と成り得る。この考え方に対して、従来は非線形結晶の高性能化に重きが置かれた研究が主流であったが、筆者等は半導体レーザの駆動方法に改善の余地があることを見い出しその改善により「半導体レーザ+非線形結晶」からなる複合系の最適化を検討した。本年度は、SHG効率が基本波のパワーに比例することに着目し、励起光源である半導体レーザをパルス駆動させ、光パワーの2乗の平均値が最大となる動作モードを模索した。実験的には、(1)市販の690nmInAlGaP系半導体レーザを利得スイッチ法により駆動し約50psのパルス発生が500MHz繰り返し周波数で可能であることを見い出し、(2)それによって生ずるスペクトル広がりがSHG効率の劣化を招くことを指摘し、(3)その問題点に対して、レーザからの出力光の一部を回折格子により波長を選択しそれをレーザ自体に戻すことにより次のパルスの種としてスペクトルの狭窄化を図るセルフシ-ディング法を適用することによって、スペクトル半値幅を0.12nm以下とすることに成功した。このスペクトル幅は高効率のSHG素子または材料の波長幅と比較しても十分に狭く、簡単な理論的な予測によれば従来のCW光源に対して20培の効率向上が期待できる。
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