研究概要 |
1.TaFD9プリズム-Ag膜(43nm厚)-PDAC_4UC_4膜(青相,1.63μm厚)-空気構造のATR配置を採用した。 2.光源としてモードロックNd:YAGレーザ光(波長1.319μm,繰り返し周波数82MHz)を用いた。反射光はPbS素子で検出した。入射光の平行度を上げるため、ビームエキスパンダーを用いた。入射角の制御には2軸ステージコントローラとコンピュータを用いた。 3.ATR配置にフィードバック機構がない場合、厳密な理論によると、光スイッチング現象のみが生じる。そこで、第一段階として、光スイッチング現象の観測を試みた。 (1)入射角θを変えながら反射率Rを測定すると角度スキャンATR信号が得られる。プリズムへの入射光パワーPをある大きな値に固定し、θを変えればRに光スイッチング現象が現れる。しかし、観測できなかった。 (2)その理由は、レーザー光の繰り返し周波数が高く、熱が発生し、それによるPDA膜の屈折率変化が電子非線形効果によるそれより大きくなるためである。 4.熱による光双安定(OB)現象が観測できれば、フィードバック機構をつけるとOBが生じるという証明になるので、その確認実験を行い、次の結果を得た。 (1)Pが90mW以上で、明瞭なOBが発生することを確認できた。 (2)表面ポラリトン(SP)によるOBとTM_0導波光(TM_0-GW)によるものを同一試料で世界で初めて観測できた。 (3)OBが生じ始めるP値を臨界入射光パワーPcとする。PcはAg膜内の光エネルギー値と逆比例関係にあることがわかった。 (4)Pが大きいほどPDAの屈折率は小さくなることがわかった。 (5)SPのPcがTM_0-GWのそれより小さいことがわかった。 (6)スイッチング速度は約1秒である。 5.さらに、熱の発生と伝達のメカニズムの検討により、レーザー光のパルス幅を100ps以下、繰り返し周波数を100Hz以下にすれば、超高速の光スイッチング,OBが観測できることがわかった。
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