研究概要 |
スピンが全分子に亘って非局在化し、π共役分子内で強磁性的秩序がはじめて成立したポリフェニレンビニレンラジカルを対象に、非線形光学特性を測定解析し、閉殻系共役分子では実現しえない非線形性を光学実験と材料設計の両面から検討することを目的としている。 (1)ポリフェニレンビニレンに共役して2,6-ジ-t-ブチルフェノキシ基、ガルビノキシル基、t-ブチルニトロキシド基、ニトロニルニトロキシド基を導入したポリラジカル量を合成した。これらポリラジカルの安定性は込み入った構造などから、むしろ低分子ラジカルよりも高い。フィルム状態、室温大気下でのラジカル半減期は1〜数日であった。 (2)これらポリラジカルは新しい化合物であるので、基底多重項状態にあることを低温磁化測定より確認した。 (3)これらポリフェニレンビニレンは吸収域300〜400nmの共役系であった。ラジカルは可視部に弱い吸収を持つ場合が多かった。 フィルムについてメーカーフリンジ法で3次非線形定数を測定した。いずれも10^<-12>esu桁で、従来報告のポリフェニレンビニレンと同じであった。ポンプープローブ法による測定も着手した。 これらの知見をもとに、共役系ポリラジカルを対象とすることにより、開殻系π電子系に特有の電子配置を非線形性にはじめて相関づけ、高効率波長変換のための新しい材料系の一つとしての可能性を議論したい。
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