本研究は、日本とロシアの気球共同実験として行われる、160時間程の長時間飛翔観測によって得られる大量データの精密自動測定を可能なものとするために、大型自動ステージと顕微鏡を合体し、顕微鏡ワークも自動解析が行えるようにしようとするものである。 今回交付された補助金により、大型自動ステージに顕微鏡鏡筒と顕微鏡用光源を取り付け、ステージのxy移動および鏡筒の上下z軸移動が、全てコンピュータによってコントロールできるようにソフトの開発を行った。その結果、40cm×50cmの原子核乾板上の飛跡の顕微鏡による自動測定ができるようになった。 本研究の対象となるデータについては、観測器を搭載した気球を平成7年7月15日および7月19日の2回ロシアのカムチャッカより放球し、共に無事着陸回収されて、現在解析中である。弘前大学ではそのうちの1ブロックを担当している。今回のチェンバーは高エネルギーのエネルギー決定が可能なように、カロリメータ層とターゲット層の間に20cmほどのギャップがついており、今までのマニュアル方式ではトレースバックが不可能であったが、この装置により、 1.リファレンストラックによるチェンバー内各層の相対位置の決定、 2.カロリメータ層でのカスケードスポットの位置によるターゲット層での衝突点の予想位置の計算、 が精度良くできるようになり、トレースバックも容易にできるようになった。現在カロリメータ層で検出された90例程のカスケードに対して、この装置によるトレースバックを行っているところであり、現在までのところ10例程の衝突点を見いだし、その性能を実証することができた。 これによって今まで多くの労力を要した発生2次粒子の衝突点までの追跡(トレースバック)が、コンピュータ制御により、精度良くまた容易に行えるようになり、本方式による大量データ処理が有効であることが立証できた。
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