宇宙初期の相転移によって作られるコスミック・ストリングからの粒子生成率の評価を粒子生成が起こる様々な場合に対して行った。その結果、従来、もっともよく議論されてきたストリング・ループが重力波を出して、最終的に消滅する際の粒子生成は極めて微少で、観測されている超高エネルギーの宇宙線を説明するのには不十分であることがわかった。しかし、コスミック・ストリングのカスプと呼ばれる部分からの粒子生成は無視できなく、コスミック・ストリングを作る相転移のスケールが素粒子の大統一理論で期待される値よりも小さい(中間スケール)場合には超高エネルギーの宇宙線の起源となる可能性があることがわかった。これは素粒子の大統一理論のスケールでコスミック・ストリングが作られるという元々のアイデアとは整合しないが、もし実際に、超高エネルギーの宇宙線の起源がコスミック・ストリングであれば、新たなスケールの存在をを予言することになり、素粒子物理的にも重要である。したがって、今後の課題としてコスミック・ストリングのカスプからの粒子生成をより正確に評価し、観測されている超高エネルギーの宇宙線を本当に説明できるのかをさらに詳しくみていくことが必要になると同時に、中間スケールでコスミック・ストリングが作られる可能性を素粒子物理的観点からも調べる必要がある。 また、高エネルギー宇宙線と関連して、宇宙初期に高エネルギーの荷電粒子が存在した場合にそれが宇宙のバックグランドのプラズマと反応して大量の高エネルギー光子を作る過程(電磁カスケード過程)を調べて、それが宇宙初期に作られた軽元素に与える影響を調べた。その結果、高エネルギーの荷電粒子が作られる時期や存在量に対して厳しい制限を得た。
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