この研究の目的は、解像型チェレンコフ望遠鏡で観測できるγ線のエネルギーしきい値を下げるために、雑音を除去し、陽子シャワーを減らす新しいトリガーを考えることである。ガンマ線シャワーの像は1つにまとまる傾向があるので、基本的にはこの傾向を利用する。ガンマ線に対して100GeVカラ10TeVの間で、陽子に対しては300GeVから30TeVの間で、エネルギースペクトルを考慮してモンテカルロシミュレーションにより事象を生成し、調べた。その結果全光子数が同じであれば、1本のPMTあたりの光子数は、ガンマ線を陽子でもほとんど同じであるから最大光子数の分布は、陽子の場合の方がゼロに近い方にピークを持つことがわかり、最大光子数でトリガーをかけるのがひとつの方法である。さらに、あるしきい値を越えるPMTが隣接しているときそれをクラスタと呼ぶと、例えばクラスタの数が1または2のとき、ガンマ線シャワーのトリガー効率が95%以上で、陽子シャワーのトリガー効率を50%にすることができることがわかった。夜光のゆらぎの影響はほとんど無い。ガンマ線の検出効率を少し犠牲にしても、陽子シャワーを減らすためには、あるしきい値でクラスタ数が1の場合を選べばよいことがわかった。詳細は、対象とするガンマ線源のエネルギースペクトルに依存する部分もあり、さらに詰める必要がある。また、現在、このトリガーを実現可能なエレクトロニクスの検討に入っている。
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