本研究は、蛋白質の高次構造特徴解析のための基礎となる三次元共通構造特徴探索のためのアルゴリズムの開発と、これに基づく三次元モチーフ探索の自動化手法の確立を目指すものであり、特に本研究課題では蛋白質の三次元構造を縮約グラフ表現を用いて記述し、グラフ理論の応用のもとでこの問題を検討した。 蛋白質の構造表現には前年度研究で用いたCα原子座標近似による簡略化表現に加え、α-ヘリックス、βシートなどの二次構造も含めた典型的な三次元局所構造セングメントの構造簡略化表現など、より高次の抽象化表現を工夫した。探索アルゴリズムについては各残基間の距離行列をもとに各分子を重み付きグラフとして表現し、個々の残基を直接取り扱ってきたこれまでの方法に加え、三残基以上連続する典型的な三次元局所構造(二次構造を含む)の始点、終点によるベクトル表現の導入とその近接性の評価手法を考案した。また、これらのアルゴリズムをもとに必要なプログラムを作成し、システムの開発を行った。作成したシステムについてはPDB構造ファイルをもとに、既知の構造モチーフを質問キ-とした三次元モチーフ検索の試行実験を通じて本法の有用性を明らかにした。
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