研究概要 |
I.動物Pタンパク質複合体のGTPase RNAドメインへの結合 ラット肝リボソームより精製したリボソームPタンパク質,P0,P1,P2はin vitroで複合体を形成し、28S rRNAのGTPaseドメインに強い結合性を示した。また、Footfrint法による解析によって、その結合部位と考えられる一つのinternal loopをドメイン中に同定した。Pタンパク質複合体はラットGTPase RNAドメインばかりでなく、大腸菌の相同ドメインにも強く結合した。この結合によって、真核生物型GTPase RNAドメインの高次構造を認識する抗28S抗体の結合性が増強することが判明し、Pタンパク質の結合がRNAの機能構造形成に影響を与えることが示唆された。同様な手法で、大腸菌の相同体L8複合体もドメイン構造に影響を与えることが示された。 II.動物Pタンパク質複合体の大腸菌リボソームへの結合とその効果 大腸菌リボソームからL7/L12タンパク質(またはL7/L12/L10)を特異的に除いたコア粒子とP0/P1/P2複合体を混合させることにより、Pタンパク質複合体と大腸菌リボソームとから成るハイブリッド(70S-P粒子)が得られた。Pタンパク質の役割を明確にするため、大腸菌intact 70Sリボソームとは作用しない動物細胞の伸長因子EF-2に対する70S-P粒子の受容性を解析した。70S-P粒子はもはや大腸菌の伸長因子EF-G依存のGTPase活性を保持せず、かわりに高い動物EF-2依存のGTPase活性を示した。また、70S-P粒子は動物細胞のEF-1α/EF-2因子依存のポリフェニルアラニン合成活性も示した。これらの活性はGTPase RNAドメインのリガンドである抗生物質チオストレプトンによって阻害された。さらに、GTPaseドメインのRNA断片をCompetitorとして加え、70S-P粒子形成を妨げた場合も活性が抑制された。 以上の結果より、酸性タンパク質複合体がGTPase RNAドメインの一定部位に結合し、RNA構造調整と機能発現に関わることが示された。
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