1.我々は、スプライシング反応に関与するU6及びU2RNA遺伝子の構造解析から、これらの遺伝子が蛋白質をコードしていない遺伝子であるにも関わらず、典型的なmRNA型のイントロンを含む場合があることを明らかにしてきた。我々は、これらの核内低分子RNA遺伝子に発見されたmRNA型イントロンは、U6/U2RNA複合体がスプライシング反応において触媒作用を持つために、何らかのmRNA前駆体から切り出したイントロンを、逆に自分自身に取り込み、そのcDNAがゲノム内に固定されて生じた可能性を提唱した。今回、その仮説を検証するため、U6遺伝子に4つのイントロンを持つR. hasegawaeのU6RNAについて、遺伝子に存在するものとは異なるイントロンが取り込まれたU6RNA分子が細胞内に存在していないかRT-PCRを利用して解析した。その結果、遺伝子に存在するイントロンの配列とは異なるイントロン様の配列を含むU6前駆体分子の存在が示唆された。現在、そのイントロン様配列がPCR時の人工産物でない事の証明を含めて、配列の由来等を更に解析中である。 2.スプライシング反応に関与する新たな因子の同定と、それらの機能を解析する事を目的として、分裂酵母のスプライシング温度感受性変異株を分離し、変異を相補する遺伝子のクローニングを行った。その結果、prplは配列内に21回繰り返されたTPRモチーフを持ち、GO期で停止する変異遺伝子として分離されたzerl遺伝子と同一である事が判明した。また、prp8は細胞周期変異株cdc28のalleleであり、DEAH boxをもつRNAヘリカーゼをコードしていることがBeach等との共同研究によって明らかにされた。これらの結果は、スプライシング反応と細胞周期の進行との間に、現在まで知られていなかった何らかの相互作用機構が存在する可能性を示唆する。
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